ケヴィン・ベーコンは、自分のキャリアが終わりに近づいていると考えるようになった。1989年、母親はがんを患い、妻のキーラ・セジウィックは第一子を妊娠していたうえ、一家は経済的にも苦しい状況にあった。長年仕事を続けてきたにもかかわらず、思い描いていたキャリアを築けていないと、彼は感じていた。

先行きが見えない状況のなか、彼は『トレマーズ』への出演を引き受けた。地下を移動して小さな町の住民を襲う巨大生物を描いた映画だ。ベーコンが作りたいと夢見ていたような作品とは言いがたく、当時の彼には、これ以上悪くなりようがないという状況の表れに思えた。

キーラとニューヨークの街を歩いていたとき、彼は感情を抑えきれなくなった。何年も後に振り返った彼は、「地下のミミズ」を題材にした映画を撮っているなんて信じられなかったと語っている。キャリアがまさに飛躍しなければならないときに、追い詰められた末の選択をしているのではないかと不安だった。 🎬

『トレマーズ』は1990年1月に劇場公開されたが、興行的に大ヒットしたわけではなかった。しかし、物語はそこで終わらなかった。VHSで発売されると、ホラーとユーモア、そして巨大生物が織りなす魅力に夢中になる観客を獲得した。少しずつファンが増え、やがて真のカルト的名作となった。

その後、続編が何作も作られ、『トレマーズ』はベーコンのキャリアのなかでも特に記憶に残る映画のひとつとなった。彼にとって最も苦しい時期に、恥ずかしい仕事だと思えた作品は、観客が決して忘れない映画になった。 🪱📼

すべてがひとつの章の終わりを告げているように思えるとき、物語は始まったばかりなのかもしれない。

