スカーレットは英雄のことなど何も知らなかった。けれどその夜、彼女は不可能に思えることをやってのけた。ブルックリンで起きた火事で、消防士たちは1匹の野良猫が燃えるガレージの中へ何度も入っていくのを目にした。隠れるためでも逃げるためでもなく、5匹の子猫を運び出すために。

中に戻るたびに、彼女の状態は悪くなっていった。やけどを負い、耳を傷つけ、火事で目もひどく損傷し、よく見えなくなってしまった。それでもなお、彼女は何度も中へ戻っていった。まるで、子猫たちをそこから助け出すこと以上に大切なものは何もないかのように。

最後の子猫を救い出したとき、彼女はさらにもう1つの行動をした。それが皆の胸を締めつけた。鼻先で子猫たちに1匹ずつ触れたのだ。まるで、みんなが生きていること、そして誰ひとり取り残されていないことを確かめる必要があるかのように。
そのときになって初めて、彼女の体はもう限界を迎え、スカーレットは倒れた。1人の消防士が彼女を獣医のもとへ連れて行き、そこで非常に長い回復の日々が始まった。やけどと彼女が負った損傷の治療には、何か月ものケアが必要だった。

その話は世界中に知られるようになった。スカーレットは生き延び、子猫たちも助かった。そして後に、特別なケアを必要とする動物に家を与えたいと願う1人の女性に引き取られた。
彼女はその後さらに12年生きた。だがあの夜、わが子のために5回も炎の中をくぐり抜けた猫として、永遠に記憶されることになった。なぜなら、説明など必要としない本能があるからだ。必要なのは、ただ愛だけ。
