母親は彼が生まれるとすぐに彼を捨てた。群れも彼を近くに置きたがらなかった。石川動物園のニホンザル、パンチは、つかまる相手がほかにいなかったため、オランウータンのぬいぐるみにしがみついて生き延びなければならなかった。

彼は1歳になった。今ではほかのサルたちと遊び、彼らと見分けるのも難しいほどだが、変わらないことが1つある。囲いの中に新しい赤ちゃんがやって来ると、パンチは真っ先に近づく。彼はその子の世話をし、守り、自分が経験したのと同じことをその子に経験させない。


施設の責任者である高橋康永は、パンチが今も大勢の人々を引きつけ続けていると語る。しかし本当に胸を打つのはこれだ。誰も彼に他者を思いやることを教えなかった。彼はただ、自分の痛みを自分のところで終わらせると決めたのだ。


